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蛍光X線分析法(XRF)の原理・特徴

 (XRF:X-ray Fluorescence Spectrometer)

 
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 蛍光X線分析は、物質に一定以上のエネルギーをもつX線を照射することによって、その物質を構成する原子の内殻電子が励起されて生じた空孔に、外殻の電子が遷移する際に放出される特性X線を検出する方法である。その波長(エネルギー)は、内殻と外殻のエネルギー差に対応し、この値は元素ごとに固有であることを利用して元素の同定を行い、その強度から元素濃度を得ることができる。

蛍光X線分析XRF原理図

 装置は、蛍光X線のエネルギー分析の方法から、エネルギー分散型と波長分散型に大別できる。前者は検出器自体がX線のエネルギー分析機能を持つ半導体検出器を用いており、後者はブラッグの法則を利用した結晶分光器を用いてエネルギー分析を行う。エネルギー分散型は、波長分散型に比べて小型で標準試料無しで定量ができるという特徴を持つが、感度的には劣り、エネルギー分解能も低いのが一般的である。検出元素は、CからUまでで、軽元素ほど感度が低い傾向にある。
 エネルギー分散型蛍光]線分析では、半導体検出器を用いることが特徴であり、検出器自体がエネルギー分析能をもつため装置の構成を波長分散型に比べて単純にすることができる。半導体検出器は、Si単結晶にLiを拡散させてイソトリンシック層としたp-i-n接合をもつ半導体が一般的である。このような特徴を持つSi(Li)型検出器ではあるが、感度(計数率)が低いことや液体窒素冷却が必要なことが利便性を損ねている。しかし、最近市販されるようになったシリコンドリフト検出器(SDD)は、比較的高い感度(計数率)を達成し、またペルチエ素子による冷却を行っており、扱いやすい検出器として注目されている。


エネルギー分散型模式図


 一方、波長分散型は装置は大型であるが、検出感度が高く、エネルギー分解能も高い。検出元素はBからUまである。多くの装置では、試料からの蛍光]線をソーラースリット (薄板を0.1mmぐらいの間隔で平行に並べたもの)に導入し、ほば平行な成分のみを取り出し、分光結晶に入射させる。分光結晶にはいくつかの種類があり、主に測定対象とする波長領域 に対応する結晶の面間隔を持つものを選択する。例えば、波長の短い蛍光X線を発する重元素の分析においてはLiF(2d=4.03Å)などが、波長の長い蛍光X線を発する軽元素の分析においてはEDDT(2d=8.8Å)やADP(2d=10.65Å)などが使われることが多い。また、分光結晶は平板だけでなく、湾曲結晶を用いて集光するタイプなどもある。
 波長分散型の装置で用いられる]線検出器は比例計数管タイプが一般的であるが 、波長の短い蛍光]線(2〜3オングストローム以下程度)の検出においてはシンチレーションカウンターが使われることもある。


波長分散型模式図


 検出器の特徴については、別項(蛍光X線分析法(XRF) 波長分散型とエネルギー分散型の違い)にも解説している。

 蛍光]線分析における定量は,蛍光]線スペクトルの強度を用いることにより可能である。一般には、対象試料と化学的組成や表面の状態が類似した、濃度が既知の標準試料用いて、分析目的の元素濃度と蛍光]線強度で検量線を作成し、検量線を用いて濃度を決めるという手順で行う。

 ただし、通常蛍光]線強度は濃度に比例するが,必ずしも直線関係が得られるわけではない点には注意が必要である。これは、蛍光]線強度は共存元素,とくに主成分元素の影響(マトリックス効果)を受けることによる。この現象は,励起]線の試料による吸収と試料内部で発生した蛍光]線が試料表面に到達するまでに受ける吸収が,試料の組成により異なってくるために生じるものであり,吸収効果とも呼ばれている。

 マトリクス効果、それに伴う検量線の考え方については、別項(蛍光X線分析法(XRF) マトリクスと検量線の形状)にも解説している。

 このため精度の高い定量分析を行うためには標準試料の測定によって検量線を作成する必要がある。ただし、この他にも濃度の決まった内標準元素を試料に加え,この内標準元素と目的元素との強度比から濃度を求めるいわゆる内標準法がある。また、ファンダメンタル・パラメータ法と呼ばれる蛍光X線の強度を理論的に計算する方法や、これによって予め計算された装置付属の換算因子を用いる簡易法などもある。

 一般的には、蛍光X線分析は定性、定量分析という分類であるが、原理的にはある程度の化学状態分析も可能である。これは、化学状態によって僅かに電子状態が変化し、それに伴って発生する蛍光X線の波長も変化することを利用する。ただし、この場合には高いエネルギー分解能を持った装置を用いる必要がある。


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 蛍光X線の大きな特徴として、非破壊分析であり、試料の自由度が高く、測定時間も短時間ですむという特徴を持つことがあげられる。試料は、固体、液体、粉末など種々の形態が可能であり、試料サイズも数十cm以上の大型試料に対応した装置も市販されている。また、非破壊分析であり、短時間で分析を行うことができ、試料作成も容易なことから、応用範囲は極めて多岐にわたっており、金属、セメント、油、ポリマー、プラスチック、 食品などの業界から、鉱業、鉱物学、地質学、さらに水や廃棄物などを対象とした環境分析でも使用されている。


 いずれにしても、測定が簡便で短時間で実施でき、対象試料の範囲も広く、定性、定量が行えることから、多くの分野において未知材料の初期分析手法として広範囲に活用されている。まずは、XRFでおよその見当をつけてから、その後の方針を決めていくという方法は一つのセオリーとも言える。

 この他に、全反射蛍光X線分析法があり、X線の入射角を全反射条件まで極めて小さくして測定する方法であり、表面感度が高いという特徴がある。具体的には、50〜100Å程度の検出深さであり、半導体用シリコンウェハの表面金属汚染などの表面付着物の分析に用いられる。

 検出下限と定量下限の考え方については、別項(蛍光X線分析法(XRF) 検出限界の計算と定義)にも解説している。



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