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走査型プローブ顕微鏡(SPM・AFM)の原理・特徴
(SPM:Scanning Probe Microscope)
SPMは、先端が原子レベルで鋭く尖った探針(プローブ)と試料間に働く様々な物理量を検出しながら走査することにより、微小領域の形態観察や物性分析を行う顕微鏡の総称である。
代表的なものの一つとして、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)がある。AFMは、探針と試料に作用する原子間力を検出するタイプの顕微鏡である。AFM探針は、片持ちバネ(カンチレバー)の先端に取り付けられおり、この探針と試料表面を微小な力で接触させ、カンチレバーのたわみ量が一定になるように探針・試料間距離をフィードバック制御しながら水平(X、Y)走査することで、表面形状を画像化する。
これに対して、走査型トンネル顕微鏡(STM)は、金属探針と試料の間に流れるトンネル電流を検出するのSPMである。 先端の尖った白金やタングステンなどの金属探針を、探針の電子雲と試料の電子雲とが重なる程度の至近距離まで試料に近づけ、微小なバイアス電圧を印加すると、トンネル効果によりトンネル電流が流れる。STMでは、このように探針・試料間距離に敏感なトンネル電流を一定に保つように走査することで原子像を得ることができる。
SPMには、AFMやSTM以外にも様々な測定方法があり、
・磁気力顕微鏡(MFM)
強磁性探針と試料間の磁気力から磁区構造を評価
・QUID顕微鏡
超伝導量子干渉計(SQUID)をプローブとし、試料表面の磁束を評価
・ホール素子顕微鏡(SHPM)
ホール素子をプローブとし、試料表面の磁場を検出
・ケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)
電圧を印加して表面電位を評価
・マクスウェル応力顕微鏡(SMM)
プローブに交流電圧を印加し、表面電位を評価
・静電気力顕微鏡(EFM)
パルス電圧を印加し、静電気力を評価
・圧電応答顕微鏡(PFM)
試料に交番電界を印加した時の微小な変形から圧電特性を評価
・近接場光顕微鏡(SNOM)
プローブ先端から近接場光を印加して複素透過率を評価
など多数の方式が開発されている。
また、測定モードとしてタッピングモードやフォースモジュレーションモードなどがある。タッピングモードは、ピエゾ加振器によって、カンチレバーを共振周波数近傍(約50〜500kHz) で振動させ、試料表面に断続的に触れながら走査して、凹凸像を得る。通常のコンタクトモードと異なり、探針が試料表面に断続的に 接触するので、水平方向に働く力(摩擦力)が生じないため、摩擦によるカンチレバーの変位が凹凸像に影響せず、軟らかい試料を傷つけることなく測定できるという特徴を持つ。
また、フォースモジュレーションモードは、カンチレバーを大きく強制振動させて試料表面に接触することで、試料の局所的な力学的(粘弾性的)情報を測定する。探針が試料表面を微小変形させる量は、軟らかい材 料の方が硬い材料よりも大きくなり、カンチレバーの振幅は試料の微小変形量にほぼ反比例する。このような、軟らかい材料ではカンチレバーの振幅が少な く、硬い材料ではカンチレバーの振幅が大きくなる事を利用して像を得る。
SPMの特徴としては、前述の多種多様な測定方法や、原子レベルにまで到達する高い空間分解能と多岐にわたる測定モードがあげられる。また、原理的にこれらの物性像と形状が同時に得られることから、形状と物性の相関を解析することが高い空間分解能で容易にできるという特徴がある。そして、SEMでは観察できない表面形状、大気中はもちろん、水中などでも測定が可能な点も広い応用範囲に繋がっている。主な用途としては、金属、半導体、有機物など非常に幅広く、多種多様な分野で活用されている。
また、最近ではSPMを観察だけでなく加工に用いることも広く検討されている。有名なものとしては、SPM探針によって原子1個を走査して基板上に文字を書くことなどがあげられる。
SPMによる分析を行うにあたって注意すべきことはいくつかあるが、その中でも特に注意すべきことは探針の鋭利度と汚れである。探針はスパッタなどの方法を用いて作成されているが、どうしても個体差が生じてしまうことがある。理想的には、先端が原子レベルで鋭利、すなわち、先端が原子1個で構成されていることが望まれる。しかし、個体差によって先端の鋭利度が観察に必要なレベルに達していないことがある。このような探針を用いてしまうと、空間分解能が上がらずフォーカスがずれたような像が得られたり、アーティファクトの原因となる。また、これと同様に使用によるダメージや汚染のために鋭利度が落ちてしまうと同様の問題が発生する。したがって、標準試料による確認等も含めて、探針の管理には十分注意する必要がある。
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