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核磁気共鳴(NMR)の原理・特徴

 (NMR:Nuclear Magnetic Resonance)

 
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 核の磁気モーメントを持つ原子(原子番号と質量数がともに偶数でない原子核)は小さな磁石と見なすことができる。この原子に磁場をかけると、原子核の磁気双極子モーメントが磁場ベクトルの周りを一定の周波数(ラーモア周波数)で歳差運動する。この原子核に対してラーモア周波数と同じ周波数で回転する回転磁場をかけると磁場と原子核の間に共鳴が起こる。この共鳴現象が核磁気共鳴と呼ばれる。



 核磁気共鳴は、当初は原子核の内部構造を研究するための実験的手段と考えられていた。しかし、後に原子核のラーモア周波数がその原子の化学結合状態などによってわずかながらも変化すること(化学シフト)が発見された。これにより核磁気共鳴を物質の分析、同定の手段として用いることが考案され、NMRが分析法として誕生した。そして、化学シフトは対象原子核の感じる磁場が置かれている状況(隣接原子など)によって異なるために起き、反磁性しゃへい効果、常磁性しゃへい効果、環電流効果、磁気異方性効果、電場効果、溶媒効果等によって決まる。

 NMRから得られる情報にはいくつかあるが、その代表は化学シフトによるものである。化学シフトは、原子核周囲の電子の遮蔽効果による共鳴周波数の微小な変化であり、原子周辺の状態、すなわち、化学状態によって異なる。したがって、これを利用して化学構造に関する情報を得ることができる。この他には、スピン−スピン結合定数(分子内の結合電子を通した隣接電子同士の相互作用に起因する分裂現象であり、微細な構造情報を得ることができる)、緩和時間(磁気モーメントを持つ分子集合体が磁場の中で平衡(基底)状態に戻るまで時間であり、分子運動性に関する情報を得ることができる)などがある。


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 定量性については、信号強度がスピン数に比例することから、信号強度比から定量値を得ることができる。通常は、ピーク面積によって定量解析を行う。NMRの定量評価における一つの特徴として、他の多くの分析手法のような感度因子という概念はなく、同一スペクトル内では信号強度を直接的に比較することができる。



 用途としては、有機化合物の構造同定、微細構造解析、物性解析などに用いられる。一般高分子の同定はもちろんのこと、新規合成物の構造決定やたんぱく質などの複雑な物質の構造解析などにも用いられる。また、医療用として用いられているMRIも原理的には同類である。

 NMR は非常に高感度な磁場測定器とも言えることから、僅かな要因によって影響されてスペクトルが歪むなどの現象が起きることがある。例えば、共鳴周波数は核が感じる磁場強度に比例するため、試料の検出領域の磁場強度の均一度が何らかの理由で低下していると、信号の線幅の広がりや 歪みの原因になり分解能が低下する。また、磁場の空間的均一性は、静磁場歪みの他、試料自身の濃度の均一性などにも影響される。

 このような点を考慮して試料調整においては、以下のような点に注意しなければならない。

試料は溶媒に均一に溶解させ、濃度勾配を生じさせない

 試料の濃度が不均一な場合、磁化率が局所的に変化し分解能が低下するため、試料全体が均一濃度になるようにしなければならない。特に高分子試料は低濃度でも粘性が高いため注意が必要であり、溶解性が悪い場合には試料調整後の放置時間にも注意する必要がある。
   
不溶物を可能な限り除去する

 試料中に不溶物が存在すると分解能が低下する原因となり、測定中に不溶物が移動すると分解能が変動し、シグナルが不安定となる。必要に応じてろ過するなどの対策を行うことが必要である。
   
必要以上に試料濃度を高くしない

 試料濃度が高くなると、一般に粘性が上がるため緩和時間(T2)が短くなり、信号がブロードになって分解能が低下するので、試料濃度は不必要に高くしないことが望ましい。
 また、高濃度の試料ではNMR信号に対する放射減衰の影響が大きくなり、信号がブロードニングすることがあるので注意が必要である。このような場合には、プローブチューニングによって線幅が変化するかなどが参考になる。
   
試料量は一定になるようにする

 液量が変わったり、試料管ホルダーに装着する位置が変わると分解能が影響を受けるので、液量は可能な限り一定(誤差0.2cm以内が理想)にし、試料の中心がコイル中心と合うようにホルダーにセットする。
   
常磁性物質を除去する

 試料中に常磁性物質が存在すると、電子スピンと核スピンの強い相互作用が生じ、NMR信号の線幅が広がってしまい分解能が低下する原因となる。常磁性物質として注意する必要があるものは、常磁性金属イオン、有機ラジカル、溶存酸素などがあげられる。この中で、溶存酸素については窒素置換などによって除去できるが、高分子量の試料の場合にはそれほど影響はなく、低分子量物を測定するときに注意が必要である。
 

 プローブの選択においては、10mmなどの大口径プローブは低濃度試料などに対して感度を稼ぐ意味で有利ではあるが、分解能を上げることが難しくなることがあるため、試料濃度が低い場合や分解能影響が少ない多核測定以外には用いられることは少ない。感度、分解能のバランスなどから一般的には5mmプローブが多く用いられている。また、試料菅についても、試料量などに応じていくつかの種類があるので、シグナル等を観察しながら適切なものを選択する必要がある。



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