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フーリエ変換赤外分光法(FTIR)の原理・特徴(概略、基本情報)

 (FT-IR:Fourier Transform Infrared Spectroscopy)

 
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  • FTIR(赤外分光法)
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 物質に赤外線を照射すると、それを構成している分子が光のエネルギーを吸収する。この吸収は、分子構造の振動あるいは回転の状態が変化することに起因する。したがって、ある物質を透過(あるいはある物質で反射)させた赤外線は、照射した赤外線よりも吸収されたエネルギー分だけ弱いものとなっている。この差を検出することで、分子に吸収されたエネルギー、言い換えれば対象分子の振動・回転の励起に必要なエネルギーを知ることができ、これによって定性分析(化学構造解析)が可能となる。

 赤外吸収の源は前述様な分子振動であるが、この振動モードは大きくは下図のような伸縮振動と変角振動に分けることができる。光の吸収は、正確には分子振動によって誘発される電気双極子モーメントとの相互作用によるものであり、官能基のような特定の原子団において局在化した振動と光の相互作用によって生じる。このことから、赤外分光法において主に観察される構造が官能基となる。

FTIR振動模式図

 そして、このとき吸収される赤外線の量は、光路長と試料濃度に比例することが知られており、いわゆる、lambert-beerの法則として記述される。したがって、これを利用することによって、定量分析が可能となり、対象構造の濃度やフィルム厚みなどを知ることができる。


 分子の振動・回転の励起に必要なエネルギーは、当然ながら分子の化学構造によって決まる。したがって、照射した赤外線の波数を横軸に、吸光度等を縦軸にとることで得られる赤外吸収スペクトルは、分子に固有の形を示すことになる。そして、分子振動には伸縮や偏角などの複数の振動モードがあり、かつ、伸縮振動にも対称、非対称などでさらにいくつかのモードが存在する。例えば、メチレン基のように単純な構造単位であっても振動モードは下記のようなものがある。

FTIR振動モード(メチレン基)

 さらに、ベンゼン環になるとその振動モードの数は飛躍的に増えることになる。


 このように官能基に代表される化学構造には、それぞれの構造に由来する振動モードがある。そして、これらの振動モードは通常異なるエネルギー状態、すなわち、ピーク位置に現れることから赤外分光法は極めて構造敏感な分析手法として利用されている。

 例えば、良く知られた基本的な高分子であるポリエチレンはメチレンを主鎖とする単純な構造であるが、先に示したように複数の振動モードを持つことから、下図に示すように赤外吸収スペクトルにおいて複数のピークを観察することができる。

FTIRポリエチレンスペクトル

 このような特徴を持つことで、下図に示すように僅かにメチル側鎖の有無だけの違いしかないポリプロピレンとも容易に判別することが可能となる。

FTIRポリプロピレンスペクトル

 一つのピークしか持たない場合には確定的な同定が困難なことが多いが、このように複数のピークを持ち、それらが全て帰属と一致すれば同定の確度は飛躍的に高くなる。このように、赤外分光法は構造敏感であることから一つの化学構造に対して複数のピークを持つことが多く、それゆえに情報量も多いという利点がある。しかし、このことは逆の見方をすれば情報過多になってしまう可能性があると言える。

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 上記の例のようにポリエチレンやポリプロピレンといった単純な構造であってもこれだけの数のピークが観察されるということは複雑な構造を持つ場合にはさらに多くのピークが観察されることになる。そして、実際のケースでは試料が単一の純粋成分ということは稀であり、ほとんどは複数成分で構成されている。すなわち、単独でも多くのピークを持つものが複数集まればその複雑さが増して解析難度を高めることになる。

 ただし、赤外分光法の特徴の一つでもある赤外スペクトルは多くの構造情報を含むということは、逆に言えば、非常に複雑なスペクトルであるということになる。したがって、ピュアな物質であればスペクトルマッチングによって検索も比較的容易に可能であるが、混合物になってしまうと急激にスペクトルの複雑性が増してしまい、ピークの重なりなども増加することから同定は容易なことではなくなる。このことが、赤外分光法は測定ではできても、スペクトル解析が難しいと感じられる理由の一つでもある。

 解析の難しさはあるものの、特に高分子を中心とした有機系化合物を始めとして化学構造や、状態解析において赤外分光法は欠かすことのできない手法であることは間違いない。例えば、混合物の場合でも試料の前処理による分離や、差スペクトル法の利用などの工夫が可能である。また、近年では赤外分光装置やスペクトル解析ソフト等も発達しており、従来に比べればハードルは低くなっているので積極的に活用することが望まれる。



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