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X線光電子分光法(XPS、ESCA)の原理・特徴(汚染とダメージ)

 (XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)


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 XPSは極表面分析であるということから、この特徴は様々な恩恵を与えてくれる半面、測定において原理上の制約や難しい一面も持っている。例えば、X線を励起源としていることから、数十ミクロン程度の領域が実用的な限界であることから微小部分析は苦手としてきた。しかし、最近になってX線の集光技術が向上したことに加えて、イメージングプレートを用いたイメージングXPSなども開発されており、その空間分解能10ミクロン前後にまでなってきている。そして、この特徴を利用してライン分析や面分析なども実施できるようになってきている。また、放射光を用いることでさらに微小部の分析も検討されている。

 また、汚染による影響は極表面分析の宿命として甚大となる。EDXなどのようにミクロンオーダーの深さまで測定する手法であれば、数nmの汚染などほとんど問題にはならない。しかし、XPSのように深さ数nmの領域しか検出しない手法にとっては、1nmの汚染であっても致命的であるといえる。

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 したがって、評価対象となる試料は、その採取から測定実施に至るまで汚染に対して細心の注意が必要となる。たとえば、油性マジックなどで試料名などを書いたり、一般的なポリエチレン製のチャック袋に入れたりするだけで致命的な問題となる。まちがっても、埃が付いたからといって息を吹きかけるようなことはしてはならない。また、試料を固定するために一般用途の両面テープを使用するなどあってはならないことである。これほどに、XPS用試料の取り扱いには注意が必要なのである。

 ここで汚染の一例として、実験用として販売されているSUS304を固定して輸送した場合に起こり得る汚染のモデルデータを示す。試料の輸送ケースへの固定は一般的に用いられるであろう方法として両面テープでポリスチレン樹脂ケースに固定して蓋をした。これを、通常の宅配便で輸送するを想定して室温で24時間保管した。以下が保管前後のXPSでワイドスキャンである。

  まず保管前であるが、当然ながら購入後すぐのものであるので表面には有機汚染が付着していることから、試料の主成分であるFe以外に炭素が多く検出されている。もちろん、これも汚染ではあるが想定内のものである。

SUS汚染前スペクトル

 しかし、次に示す保管後のスペクトルでは様相が大きく変わっている。保管前には見られなかった100eV、150eV付近に新たにピークが出現し、保管前には明瞭に観察されていた700eV付近の試料由来Feのピークがほとんど見られなくなっている。新たに出現したピークは、そのピーク位置からSiに帰属されるものであり、これは固定に用いた両面テープに由来するものである。両面テープは使い勝手を考慮して剥離紙側にシリコーン系の成分が塗布されているため、テープ側に転写付着した剥離用シリコーンの一部が揮発、再付着によって試料を汚染したのである。僅かに24時間程度でXPSでの評価が困難になるほどの影響が生じている。特に、シリコーンは接着不良の原因を始めとして代表的な汚染物質であることから間違った解釈と結論を産み出してしまいかねない。

SUS汚染後スペクトル

 このようなことから、XPSを代表とする表面分析では汚染に対して特に細心の注意を払う必要がある。

 また、XPSは試料ダメージがほとんどない手法として知られているが、X線や中和銃として用いる電子線のダメージを受けやすい試料もあることからその影響に注意しなければならない。特に、ダメージによる影響は通常表面側ほど大きいことから、極表面分析であるXPSはより強くその影響を受けやすいと言える。例えば、有機系フッ素は非常にダメージを受けやすく、測定中にフッ素組成が減少することがある。そのため、このようなダメージを受けやすい試料の場合には、積算時間を極力短くしたり、ダメージを受ける元素や関連する元素を先に測定するなどの工夫が必要になる。 


 
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