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トラブル・不良分析 変色分析

 
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 変色劣化の一種であると言えるのですが、特に変色に関しては分析担当者にとって鬼門とも言うべき非常に厄介なものと言われています。その最大の要因の一つは、変色原因となる物質構造がほんの僅かであっても顕著な変色を示すことが多いことによります。そして、これと関連しているのが、人間の目の色変化に対する感度の高さです。

 人間の目は色の変化に対してとても敏感で、かつ、僅かな試料の変化で変色が起きるということは、人間の目では顕著な色の変化が起きているにもかかわらず、実際の試料の変化は極めて微小であるということです。すなわち、分析する側から見れば、未知の極めて微量な原因物を捕らえなければならないということになってしまうのです。これが、変色分析を厄介なものにしている原因なのです。

 変色原因としては様々な要因が考えられますが、大きくは二つに分類することができます。一つは、着色源、すなわち、それそのものが色を持った物質が形成されることによる変色です。これには、元々色を持っている対象物が何らかの変化をして別の色に変わってしまったというものも含まれます。変色原因の多くは、これに分類されると考えられます。そして、もう一つはそれそのものは色を持っていないが、例えば、薄膜であるために干渉発色していたり、高次構造の変化などによって屈折率が変わって光散乱を誘発して白濁するなどのパターンです。

 変色化学構造の変化であると予想される時、例えば、有機物の黄変などの場合、赤外分光法(FTIR)分析手法の第一候補として考えたくなります。しかし、実際に分析して見ると変色による化学構造の変化は検出されないことが多くあります。これには、二つの要因が強く関わっています。
 一つには、前述の着色源の量の問題です。有機物の黄変の場合、最も多いパターンとしては光劣化などによって共役構造が形成され、それによって着色するということが考えられます。しかし、この着色原が極めて微量のため、FTIRのような一般的に%オーダーを対象とするような分析手法では検出できないということが挙げられます。


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 そして、もう一つは予想対象物と手法であるFTIRとの相性の問題です。FTIRカルボニル化合物などに対しては高い感度を持っているのですが、共役構造についてはそれほど高い感度は持っておらず、どちらかといえば低いといえます。元々少ない物を低い感度で観察することになるのでさらに難度が上がってしまうという状態になってしまうのです。




 このような場合には、例えば、試料の前処理によって変色物を濃縮するなどして、FTIR分析を行ったり、有機組成分析を行ったりする方法が候補として考えられます。このとき、さらに加速試験をして変色を進行させて対象物の量を増やすという方法も考えられますが、この場合、劣化が違うモードに突入してしまうという可能性もあることに注意しておく必要があります。

 もちろん、構造解析だけでなく、紫外可視分光法(UV-Vis)などの分光法も有効な方法ではありますが、原因物の構造同定まで行うことは難しいことが多いと言えます。ただし、変色の有無や変色の類似性をそのスペクトルから判断するためには非常に有効な方法です。また、前述の対象物を濃縮する場合の抽出確認や、加速試験における類似性を確認することに有効であると考えられます。

 いずれにしても、変色原因究明は難度の高い課題であるということを認識して、短絡的に進めようとせず、多面的にじっくりと攻めていくことも重要だということです。


 

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