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日本的人事ローテーションの愚


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 企業においては、日本に限らず人事異動はどこでも見られる光景の一つである。ただ、人事異動という中でも、大きく分けると二つの種類がある。一つは、より適した部署、ポジションへの移動であり、目的と期待される結果が明確な意味のある人事異動である。もちろん、本人の希望という場合もあれば、会社としての経営判断という場合もある。ただ、どちらにしても、多くの場合双方にとってプラスに働くことがほとんどであると言える。日本でも最近増える傾向にあるが、欧米で盛んな転職やヘッドハンティングも広い意味ではこれに該当する。

 しかし、人事異動にはもう一つの種類が存在し、特に、日本企業に多いパターンと言えるものがある。こちらは、その意味を推し量ってかどうかは分からないが、特に人事ローテーションと呼ばれている。前者との違いは、明確な目的や効果を期待したものではなく、どちらかと言えば人事異動のための人事異動とでも言うべきものであり、移動させる、部署をローテーションすることが目的とでも言った方が的確かもしれない。

 大義名分としては、色々な部署を経験して適性を判断する、事業全体を知る、など様々であるが、果たしてそれらは本当に人事異動をしてまで実行する必要のあるものかということが問題となる。少なからず、異動先としては異なる全く違う業務内容や分野が選択されることが多い。これは、当然ながら前述のような大義名分であるから近い業務内容の部署や部署内では意味が無いという理由からであろう。しかし、本当にこういった人事ローテーションに人材育成上の効果が言われているほどあるのだろうか。しかも、驚くべきことに日本企業の相当数で人事評価項目の一つとして異動回数が昇格の必須条件となっており、中には、社長などの経営陣が5年以上同じ部署にいることは認めないというような意味不明なことを公言している企業すらある。すなわち、異動しなければ、昇進できないことはもちろん、ルール違反になってしまうのである。

 確かに、ある人材を経営陣として育てようとした場合、その企業の全容を把握しておくことは意味を持つことである。しかし、人事異動がスタートする年齢(早い企業では入社数年以内に始まるので20代ということになる)の人材を見て経営陣に迎えると言うことが判断できるはずもない。もちろん、こんな風に指摘するとほとんどの企業の人事担当者は、だからこそ全員に人事異動を繰り返すことで適性人材を見つけ出している、という言い訳をする。しかし、企業における人材育成とは決して経営陣を育てることだけが目的ではなく、企業活動の中ではそれ以外の人材のウェートが十分に大きいことは説明の必要もないであろう。にもかかわらず、本当にこんな理由で人事異動を行っているのであれば、それは、多くの人材を無駄に浪費しているだけに過ぎない。

 例えば、技術系、特に研究開発を行う人材が営業や生産系部署にローテーションされるパターンは比較的多く見られる。この大義名分は、研究開発を行う技術者も市場ニーズを拾い上げるスキルや事業化を見据えた製造系の知識も身につけておくことが望ましい、というものである。もちろん、一見するとこの理由はそれらしく聞こえ、当然ながら完全に否定することは困難である。しかし、ここで冷静に考えて欲しいのは、果たしてその目的を達成するためには人事異動までする必要があるだろうか、ということである。市場ニーズが知りたければ、そういった情報は少し調べれば今の世の中にはたくさん見つけることができる。また、もっと突っ込んだお客様の生の声を聞く必要があるというのであれば、開発中のテーマと関連するクライアントに営業担当者と共に行ってヒアリングすればそれで済むことである。また、製造技術も必ずしも自分がそこに身を置く必要はなく、生産現場の担当者や専門メーカーとディスカッションすればそれで済むことである。ラボレベルでの製造と量産との間には大きな谷があり、それぞれに高度な専門性が必要となるものであり、少しぐらいかじったところで大きな成果は期待できない。


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 それよりも大きなマイナス面として、研究開発の場から離れてしまうことの影響の方が大きい。その技術者が分野の先端に位置していればいるほど、少しでも研究開発の場を離れることは致命的となりかねない。現代の技術進歩の速度は想像以上であり、半年や1年離れるだけでその遅れを取り戻すことは大変な労力を必要とする。にもかかわらず、数年以上にわたって異動するということは、技術者にとって致命的なハンデを背負うことになってしまうのである。


 また、前述の市場ニーズの吸い上げ、という面についてもう一つ指摘するなら、立場の違いによって得られる情報が異なるということである。往々にして、クライアントにとっては、営業担当者は基本的に無理をお願いする相手、開発者は相談する相手という無意識の切り分けが存在する。したがって、技術者が必要とするようなディスカッションを営業担当者という立場ですることは極めて困難であると言える。また、潜在的な市場のニーズなどは、普通に営業担当者でもキャッチすることができるはずであるから、営業担当者から技術者が聞けばそれで済むことになる。もしも、そのようなニーズキャッチができないのであれば、それはその人材にが営業スキルがないという判断にもなる。また、必要なら同行訪問することで細かなニュアンスや技術面の吸出しも容易なことである。

 このように、実際には人材育成にはほとんど意味を成さないような人事ローテーションがほとんどの日本企業で日常的に行われている。最近の人材流動性の高まりの中では、このような無意味な人事ローテーションを行ったがために優秀な人材が流出するという事態も数多く見られる。もちろん、人事異動が全くなければ部署の澱みを生むことになる可能性あるので、全く不要というわけでない。しかし、ただ回数を稼ぐ、適性は無視した異動のための異動などというものは企業にとっても、人材にとってもマイナスでしかない。

 そろそろ、日本の企業も旧態依然とした無意味な人事ローテーション神話から脱却し、本当に企業にとっても人材にとってもプラスとなるようなやり方に成長していって欲しいものである。

   
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