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どんな情報(データ)が必要なのか?
分析に限らず、研究開発やトラブル解決を行う上では、目的、すなわち、ゴールを明確に設定することが最も重要になります。目的が明確に設定できていなければ、どこに向かって走り出せば良いのか、何をしたら良いのかということがわかりはずもなく、当然ながらそのような状態では計画と呼べるようなものも立てられるはずもありません。
ただし、目的(ゴール)と言っても様々なものレベルがあります。研究開発であれば、そのテーマ発案時に設定した開発目標、例えば、材料開発であれば材料の完成、製品開発であれば試作または量産への移行が最終ゴールになるのが一般的でしょう。また、もう少し踏み込んで商品化、さらには、その商品のヒットというのが究極の目標ということになるかもしれません。また、トラブル対策であれば、そのトラブルを解決すること、もっと具体的には、不良品が無くなる(減少する)ということになるでしょう。
確かに、これらは最終ゴールという意味では、必ず最初の段階でその位置づけを明確にしておかなければならないことです。しかし、これだけで実験計画、行動計画が策定できるかというと、そうではないことが多いのも現実です。最終ゴールの設定は必ず必要なものであり、言わば、灯台や太陽のようなものです。迷路に迷い込まないように、堂々巡りにならないように進むべき方向、目指すべき場所を見失わないために必ず必要なものです。
しかし、残念ながらそのゴールは決して近いものではないので、すぐに途中の道程、進み方が見つけにくいのです。そこで必要なことは、最終ゴール、目的を実験計画、行動計画にまで落とし込む作業なのです。言い換えるなら、スタート地点に向かって順番にチェックポイントを設定していくことが必要になります。具体的には、トラブル解決ならば「なぜ」を5回繰り返すというようなことが言われたりしまします。なぜを繰り返すことで、より具体的なイメージ、真の対象へとたどり着けるという意味です。
データは出るが、課題・問題が解決しない |
材料開発が上手くいかない、早く材料を開発したい(ゴール)。なぜ上手くいかないのか、必要な物性値が出ない。なぜ物性値が出ないのか、期待したような構造になっていないのかもしれない。では、どんな構造になっているのか。どういうレベルの構造が期待通りになっていないのか、組成?、高次構造? 今の構造が分かれば、その原因に関するヒントが得られる可能性が高い。当面の目標は、現在の構造を把握することである。
製造プロセスで不良品が発生した、不良が発生しないようにしたい(ゴール)。不良の正体は何か、どういう種類の不良なのか、色、表面荒れ、物性値。なぜ不良が発生したのか。原料のロットが原因で不純物や組成、構造などが異なっているかもしれない。では、何が違うのか、それが分かれば対策を考えられる可能性が高い。当面の目標は、良品と不良品の違い、原料の組成の違いを明らかにすることである。
というような手順で、最終目標を当面のターゲットにまで落とし込んでくる必要があります。実は、この手順をきちんと踏めない人が意外といるのが現状です。
では、分析を使う場合にはどのような点に注意する必要があるでしょうか。ここでポイントとなるのは、分析の場合は基本的に数値が結果として出てくるということです。一部、SEMなどは数値ではなく画像ですが、これについても高性能なイメージプロセッサーである脳が解析するので、一種の数値と同等ということもできます。
すなわち、分析を十分に活用するためには、目的を計画に落とし込んでいくプロセスにおいて、最終的には数値にまで落とし込む必要があるということに注意しなければなりません。例えば、良品、不良の比較においては、単に両者を比較するというところで止まってしまっては、どのような分析手法を用いれば良いのか分からず、結果が出てきたとしても目的につなげて考えることができなくなってしまいます。このことは、分析を使う時に限ったことではなく、物性値にまで落とし込んで考えていくようにしなければ、何をもって異なると判断するのか、何が異なることが原因に繋がるのかということが不明瞭なままで実験をしていくことになり、堂々巡りの原因となってしまいます。
したがって、目的を実験計画にまで落とし込んでいく過程では、その段階が進むにつれて、物性値にまで落とし込んでいかなければなりません。そして、落とし込んでいったもの、最終的に落とし込んだ物性値などの実験データにつながるものと、最終目的との間の関係やつながりを常に意識しながら計画を立てて実験を進めていくことに最大の注意を払うようにしなければなりません。
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