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abstract(要約)とintroduction(緒言)の書き方


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 学術論文を一度でも書いたことがある者ならば、必ず実感することが一つある。それは、abstractとintroductionを書くことの難しさである。論文の読み手は、ほとんどの場合、まずtitleを見て自分の関連分野かどうかを判断する。そして、次にabstractを読み、本格的に読むに値するかどうかを判断するのである。そこで、興味を惹くことができなければ本文まで読まれることは難しい。優秀で精力的な研究者であればあるほど多くの論文に目を通そうとする。しかし、1日の時間は誰にも等しく24時間しか与えられていない。そのため、それを可能とするために彼らは良い論文を見分ける鼻を持っており、その嗅覚によって論文の取捨選択をしている。だからこそ、彼らの嗅覚をくすぐるようなabstractにしなければならないのである。

また、新規性があればあるほどintroductionが魅力的であり、その研究の価値を背景も含めて端的に示すものでなければ、読み手にとってのその研究成果の価値は半減してしまうといって良い。abstractで読み手を呼び込み、introductionで読み手の心をつかんで引き込めなければどんなに優れた内容でも正当な評価を得られないことは珍しいことではない。もちろん、看板であるtitleも端的に言いたいこと、内容を表した魅力的なものでなくてはならないことは言うまでもない。

 では、abstractやintroductionはどのように書けばよいのであろうか。

 abstractで重要なこと、それは前述の通り本文まで読みたいと感じるように興味を惹く魅力を持っていることである。言い換えるなら、abstractを読んで「なるほど。面白そうだ!」と思えるように表現することが大切である。得られた結果、結論がどれほど興味深いものであり、サイエンスの世界にインパクトを与えるものであるかということを、論理的に納得できる形で、短い文章の中に端的に、インパクトを持って訴えるものでなければならない。そのためには、もちろん研究自体が魅力的でインパクトのあるものでなければならないことは言うまでもない。

 中には、abstractの量の制約の中で表現することは難しいという声があるかもしれない。しかし、本来サイエンスとは単純明快で、ある種の芸術のようにきれいなものだと筆者は考えている。長い文章でしか書けない結論は、掘り下げ足りない結果であり、長い文章の大部分は仮定や前提などの言い訳でしかないことが少なくない。また、結論が式である場合も同様で、長い式は言い訳の表れでしかなく、物事の本質は単純で明快な形に表現できるはずである。すなわち、高度な研究でもその本質はシンプルなアイデアでできているはずであり、したがって、その結論も端的に表現できるはずなのである。

 そうやって、abstractでは結果の端的な魅力をもって読者をひきつける。そして、次にintroductionでその魅力の背景、有効性、優位性、新規性などといった価値の土台を説明することで、研究成果がいかに意味を持っており、読むべきものであるのかということを現すのである。したがって、introductionで書くべきことは、

・ What is the problem?
     (解いている問題は何か?)

・ Why is it interesting and important?
     (なぜその問題が面白くて重要なのか?)

・ Why is it hard?
     (その問題のどこが難しいのか?)

・ Why hasn't it been solved before?
     (なぜ今まで解かれてなかったのか?)

・ What are the key components of your approach and results?
     (この研究のどこが重要なのか?) 

といったことになるのである。

また、全体を通して念頭に置くべきこととして、「なぜこの研究成果がすばらしいのか」、「研究成果がどれほどスマートでクールなもので、予期しえないものなのか」、といったことがあげられる。

 これらのことに注意しながらabstractやintroductionが書ければ、後は実際に行ったことと得られた結果を理路整然と文章やグラフとして表現していくだけである。しかし、実際にはそれほど簡単なものではなく、毎回とても苦労してしまう、という研究者もいるかもしれない。もちろん、簡単な作業でないことはその通りであるが、それだけが理由ではない。ここで平均以上に苦労するということは、研究の意味や結論が論理的でない可能性が高い。すなわち、スマートでクールな結果でないためにどうしても言い訳が必要になり、長い文章や表現に苦労するのである。また、十分に関連する過去の研究の調査が不十分であり、意味づけが浅いためにintroductionで苦労するのである。

 優れた研究(者)は、研究を始めるときには、そのテーマが該当分野の中でどういう位置づけになるのか、どのような意味を持つのかということを明確に考えていることはもちろん、どのような結果が生み出されるはずなのかというストーリーも頭の中には出来上がっているのである。実験は、その頭の中に出来上がったジグソーパズルを完成させるためのピースを集める作業でしかないのである。したがって、titleはもちろんのこと、abstractもintroductionも自然に頭に浮かんできて出来上がっていくのである。言いたいことはすでに決まっているのであるから、読み手を説得するように論文を完成させていくのである。

 論文を書くことは、title、abstract、introductionはもちろん、本文も含めて、考え方をまとめること、研究シナリオを作成することのとても良い訓練になる。したがって、投稿するかどうか、発表するかどうかは別にして、研究の区切りごとに論文形式でまとめていく癖をつけることはとても重要なことである。この時、必ずしも論文のとしての正式な態様を持っている必要はなく、論文を構成する要素(abstractやintroductionなど)に相当するものがあればそれでよい。もちろん、語学の修練のために文章化するというのも時間が許せば有効なことである。その結果として、まとめることにホトホト苦労するようであれば、論理展開、実験内容、ストーリー、仮説など研究の重要な要素に何らかの潜在的課題や論理の飛躍が潜んでいる可能性が高い。

 論文形式でまとめることは確かに労力を要することもあるので、慣れるまではabstract形式だけでも書くとそれだけでも大きな意味を持つ。ただし、そうは言うものの、せっかくの成果を世に問わないというのはとても勿体無いことである。また、発表できる程度にまとまらない、発表に値する内容ではないと感じられるような成果は、まだ不十分な状態にあり、スタートから見直しを図る必要性を検討すべきである。


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