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ピーク高さと面積

 
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 赤外分光法などの分光分析や、液体クロマトグラフィーなどのクロマト分析などの多くの分析において定量的評価を行うことは日常的に行われている。これらも含めて通常の分析において定量評価を行う場合には、一般的にチャートのピークを読み取り、その値から標準試料との比較や検量線を用いることで定量を行っている。

 定量値の信頼性に対しては、もちろん測定精度などのデータの信頼性が大きな要素となっていることは言うまでもない。しかし、これと同等に大きな影響を与えるのがデータ処理の方法である。特に、ピークの読み取り条件は結果に対して大きな影響を与える可能性を秘めており、その判断には特段の注意を払う必要がある。

 例えば、データ処理において頻繁に用いられる手順としてスムージングがあげられる。スムージングはバックグランレベルに近い微小ノイズを軽減するなどの効果があり、データ処理では一般的に用いられるものである。ただし、良く知られているように一般的なスムージングでは隣接データとの間で平均化などの数学的処理をすることでノイズ除去をおこなうので、データ点の減少はもちろんのこと、ピーク位置の変動や強度の低下などが起こることがある。また、スパイクノイズなどの強度の強いノイズがある場合、データがそれに引きずられてしまうことがある。特に、後述するピークの読み取りにおいてピーク強度を採用する場合には注意する必要がある。

 さて、このようにデータ取得やデータ前処理に細心の注意を払ったとしても、ピーク読み取り時に多くの方が悩む問題がある。それは、ピークの読み取りをピーク強度、すなわち、高さで行うのか、ピーク面積で行うのかということである。多くのケースでは、手法ごとの慣例に習って読み取りの方法を決めているのではないか想像される。確かに、慣例に則るというやり方も一理あり、異なる技術者間データを比較するときに問題が起きにくいという利点もある。

 しかし、より良い解析を行うためには単純に慣例に則るという考え方に流れるのではなく、高さと面積という読み取り方それぞれの特徴を十分に理解した上で、目的やデータの質なども考慮しながら最適な方法を採用することが重要である。

 慣例というところから過去に目を向けると、高さで読み取られることが多かったという傾向が見られる。これは、データ処理システムの機能的な制限によるところが大きいと考えられる。現在はデータ処理システムが発達して容易に面積でも高さでも高い自由で読み取ることができる。しかし、初期の頃は、データレコーダーでチャート紙に直接記録するという方法がほとんどであった。そのため、当然ながら面積を自動計算するということは難しく、面積での議論が必要な場合にはチャート紙をピークの形に切り取って多さを計るなどの方法を用いなければならなかった。当然ながら、作業も煩雑であり、誤差も大きくなってしまうことから、どうしても高さによる読み取りが主流となった。

 しかし、高さによる読み取りは簡便であり、ベースラインの変動による影響も受けにくいという利点もあるが、スパイクノイズの影響を受けやすく、半値幅や対象性などのピーク形状による影響が大きいという点に注意する必要がある。そして、特にクロマト系の分析の場合には、成分とカラムの組み合わせによってピーク形状が大きく変わることがあるために正しい結果を得られないという可能性もあることを理解しておかなければならない。

 これに対して、面積値の場合にはこれらの影響も軽減されるということに加えて、データ処理システムの発達によって作業が簡便になったことも手伝って多くの手法が面積値を採用するようになってきた。ただし、面積値による読み取りも完全というわけでなく、例えば、ベースラインや計測範囲の設定による影響がピーク高さに比べて大きくなることがあるなどの点には注意しなければならない。

 多くの手法では、原理上は理想的にはピークは一点に集約されるはずであるが、現実には揺らぎの問題や装置上の問題などである幅を持った形状、ほとんどの場合はガウス分布やガウス分布とローレンツ分分布の混合となっている。そして、通常その影響はピークごとに変動するために、幅が異なったり、左右の対照性が異なったりする。したがって、迷った場合には、可能であれば面積による議論をすることが適していることが多いということもできる。

 しかし、現実にはデータ処理上の問題も関係してくることから、一概には言えないという点がこの問題を複雑にしている。多くの場合、多数のピークを含む多数のデータを一定の条件の下で自動処理することになる。ところが、様々な理由から同一の条件では処理できない状況が起きてしまうことが多い。例えば、ピークシフトや形状の変化、ベースラインの変動などが挙げられる。このような場合、高さに比べて面積の方が大きな影響を受けてしまうケースが少なからずあるので注意が必要である。

 いずれにしても、処理を行うデータの状況を十分に吟味した上で、そのケースでより適切な方法を採用することに注意を払わなければならない。そして、通常自分が扱うデータについて、高さと面積にどれほどの違いが生じるのかという点は理解しておく必要がある。そういった予備検討を十分に行った上で、データ処理の限界を認識して解析を行わなければならない。そして、もちろんどのような条件でデータ処理を行ったのかということをデータや結果に記録しておくことは言うまでもない。



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