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モチベーションの醸成


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 日本の産業界においても、従来の年功序列制度に変わって、欧米各国の例に習った成果主義、目標管理制度が導入されて久しく、多くの企業において中心的な人事評価・管理制度として採用されている。したがって、当然のごとく総務などのスタッフ部門から、研究開発部門、そして、製造部門にいたるまで幅広く採用されている。特に、管理職群に対しては、絶対的な管理手法として定着していると言っても良い。

 このように、ある意味劇的な人事制度の転換が起きた背景には相応の理由があったことは言うまでもない。年功序列に代表される従来型の人事制度は、端的に表現すれば終身雇用を前提として、時間の経過が評価基準であったということができる。このような基準を成立させる前提として、加齢とともに労働者の技術や能力が蓄積され、最終的には企業の成績に反映されるとする考え方を基にしている。結果として、年齢と共に能力があがるという結論の元に賃金は年々上昇し、経験豊富な年長者が管理職などのポストに就く割合が高くなる。

 日本においてこのような制度が中心となった理由としては、村などに代表される組織単位での生活という社会性が基本であったことから、個々に明確に責任を求める成果主義が馴染まなかったことや、年少者は年長者に従うべきという儒教的な考え方が古代から強かったことなどが挙げられる。これらに加えて、右肩上がりの経済成長が期待できる社会情勢も、若年者層は、管理者である年長者層に比べ賃金が抑えられているが、もいずれ年功によって管理職に昇進し賃金が上昇するという期待を十分にもてる環境的背景となっていた。もちろん、終身雇用制度による将来の保障ということも大きな要因である。


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 そして、このような背景の下、社会性と一致する指示系統(年長者から年少者へのライン)、将来の保障を背景とした忠誠心の醸成、子供の成長に伴う家計増大という社会構造のマッチング、そして、会社側にとって非常に容易な人事評価制度ということも手伝ってほとんどの企業で採用された。特に、戦後日本の中心産業である製造業、そして、その大部分を占める製造現場の労働者たちの評価制度としては、ある意味理に適ったものであった。



 しかし、現実には様々な問題を内包することになる。例えば、組織に対して大きな貢献をしなくても、時間の経過によって賃金が増え、地位も得られることから抜きん出た努力を期待することが難しい。そして、逆に失敗をすれば将来が脅かされることから、チャレンジする土壌が生まれず、企業の成長にとっては妨げとなってしまう。このように、年功序列制度は、資本社会にありながらある意味では社会主義的制度であるとも言える。この他にも様々な問題があるが、共通するのは、企業にとっては成長の源であるチャレンジ精神、生産性向上と人材成長に必要なモチベーションの維持、特に若年層のモチベーションの維持が難しいことが挙げられる。

 このような問題点に加えて、経済成長のシフトによって、産業が必要とするものが単純な生産性だけではなく、研究開発に代表される創造性が必要とされる方向の比重が大きくなってきたことで年功序列による人事制度では対応が難しくなってきた。そして、右肩上がりの成長に陰りが見えてきたこと、人材の流動化などが進み従って、さらに年功序列制度と現実が求めるものとの乖離が大きくなってきた。

 そのような時に、1990年代を境にして、欧米の例を見ながらこぞって導入されたのが成果主義を基本とする新しい人事制度である。成果主義では、文字通り本人の成果によって人事評価を行うというものである。したがって、この制度においては成果の評価が必要不可欠、かつ、最も重要なものとなる。単純には、企業にとっての成果は利益と言えるので、利益(またはそれに繋がる売り上げ)に対してどの程度貢献したかと言うことになる。しかし、全ての職種が売り上げに直結するような生産を行っているわけではない。例えば、研究開発部門は、逆に会社の売り上げの一部を研究開発として消費しており、その意味では売り上げ基準では貢献していないという判断にもなってしまう。

 そこで、このような問題を解決する手段として、多くの企業で成果判断の基準として採用されているのが、目標管理制度である。目標管理制度では、期初に当該期における達成目標を設定し、その達成度を判断指標とするものである。もちろん、職種によっては売り上げ数値を目標として設定する場合もある。

 このように、成果主義とは、ある意味では「アメとムチ」型の人事評価制度であるといえる。すなわち、がんばって努力をして目標を達成して成果を出しなさい(ムチ)、そうすれば昇給や昇進といった褒美(アメ)を得ることができると言うものである。一見すると、がんばった者にはその労働に報いるということで、公平な評価に基づくモチベーションの向上による生産の向上や適正な賃金配分など非常に理に適っているように思われる。しかし、現実にはそのように理想的にはシステムが機能せず、様々な問題が生まれている。

 成果主義においては、本来的には個々の目標達成度に対して絶対評価が基本であるにもかかわらず、現実には総賃金も人事ポストも総量が決まっていることから相対評価となってしまい適正な評価が実現されないことが多い。また、多くの企業では目標を100%達成できて標準的評価とするという基準になっていることから、どうしても目標自体が低めに設定される傾向にある点も問題である。

 そして、根本的な問題として挙げられるのが、評価者の力量を中心とする評価プロセスや評価基準がある。成果主義を基本とする人事制度が本来の機能を発揮するためには、評価が客観的に行われ、評価者はもちろんのこと、被評価者の十分な納得が得られることが重要となる。しかし、現実には評価者の育成が十分ではないことから客観的な評価となっていないことが多い。そして、前述のような「総量」の問題もあり、最も目標達成の評価ができるはずの1次上司の評価が、簡単に2次以降の評価者によって変更される点も不透明な制度と言われる原因の一つである。

 この他にもいくつかの問題が当事者や技術者から言われているが、実は最も根本的な部分で非常に興味深い研究結果が報告されていることはほとんど知られていない。成果主義とは、先にも述べたとおり、「アメとムチ」という考え方に基づいている。この考えの中では、褒美を与えることによって生産性が向上するという前提が必要となる。しかし、現実には、必ずしもそのような期待を持つことはできないという報告がある。

 有名な心理学の実験で「ロウソクの問題」というものがある。これは、1945年に、カール・ドゥンカーという心理学者が考案したものであり、多くの行動学の実験に用いられてきた。詳細は省くが、ある程度の閃きや発想の転換が必要ななぞなぞのようなものだと理解すれば問題はない。この問題を使って、サム・グラックスバーグという科学者がインセンティブ、すなわち、報酬(ご褒美)に関する興味深い実験を行った。

 二つのグループに対して、問題が解けるまでの時間を計ると告げて実験を開始する。ただし、一方のグループには「上位25パーセントの人には5ドルお渡しします。1番になった人は20ドルです」という条件を与える。さて、二つのグループを比較したとき結果はどうなったか。市場原理、資本主義の原則、一般的な理解で判断すれば答えは明白なはずである。しかし、実際には報酬を提示したグループの方が3分以上も遅いという結果になった。すなわち、思考が鋭くなり、クリエイティビティが加速されるようにと報酬を用意したにもかかわらず、結果は反対となり、思考は鈍く、クリエイティビティは阻害された。

 この実験のさらに興味深いことは、同様の実験が40年以上にわたって繰り返され、再現されてきた点にある。この成功報酬的な動機付けである「アメとムチ」式(行動学的にはIf Then式と呼ばれる)は、多くの理解と期待とは裏腹に、多くの作業ではうまくいかず、時には害にすらなるのである。これは社会科学における最も確固とした発見の1つであり、最も無視されている発見でもある。

 もう一つ、興味深い実験結果がある。この実験では問題を単純化して平易にし、誰でも少し考えれば容易に解ける内容とした。その結果、先の問題とは正反対に報酬を提示したグループが圧倒的に早く問題を解いた。

 すなわち、If Then式の報酬は、このような作業にはとても効果がある。これは、単純なルールと明確な答えがある場合には、報酬が効果的に視野を狭め、心を集中させる効果をもたらすためである。したがって、製造現場のような単純な作業に対しては、報酬狭い視野で目の前にあるゴールをまっすぐ見ていればよいので、アメとムチ型のシステムが機能する場合が多いのである。しかし、本当のロウソクの問題では、答えが目の前に転がってはいないため、そのような見方では答えにたどりつけないので、周りを見回す必要がある。しかし、報酬は視野を狭め、私たちの可能性を限定してしまうために逆に効率を落とす結果となるのである。

 これらの結果は、現代の企業においては非常に重要なことであるといえる。現代社会においては、サルでも分かるような単純な仕事は少なく、本当のロウソクの問題のような思考力や想像力を必要とされる種類の仕事が増えている。ルーチン的、ルール適用型、左脳的な仕事、ある種の会計、ある種の財務分析、ある種のプログラミングは、簡単にアウトソースができ、簡単に自動化できる。そして、多くの場合ソフトウェアのほうが早く正確に行うことができる。今、そして、今後重要になるのは、もっと右脳的でクリエイティブな考える能力なのである。

 すなわち、アメとムチ式である成果主義は現代社会において必要とされる多くの分野において適さないだけでなく、逆に弊害になりうるのである。しかし、現実には多くの企業でアメとムチ式の制度が崇拝されている。では、どうすればよいのか。今必要とされているのは、内的な動機付けに基づくアプローチ、言い換えるなら、モチベーションを重要視したアプローチである。重要だからやる、好きだからやる、面白いからやる、何か重要なことの一部を担っているからやる、という自発的、能動的な行動基準に基づくシステムである。

 具体的には、有名なものでは「20%ルール」と呼ばれるものがある。エンジニアは仕事時間の20パーセントを何でも好きなことに使うことができるというものであり、Googleがやっていることで有名である。時間、タスク、チーム、使う技術、すべてに自主性が認められる非常に大きな裁量である。そしてGoogleでは、よく知られている通り、Gmail、Orkut、Google Newsなどなどの新製品の半分近くがこの20パーセントの時間から生まれている。

 これだけを見ると特異な例と受け取られてしまう可能性があるが、この他にも多くの事例がある。例えば、1990年代半ば、MicrosoftはEncartaという百科事典を作り始めました。適切なインセンティブを設定し、何千という専門家にお金を払って記事を依頼し、十分な報酬を得ているマネージャが全体を監督し、予算と納期の中で開発した。何年か後に、別な百科事典がまったく異なるシステムで開始され。執筆者は、楽しみでやる、1セント、1ユーロ、1円たりとも報酬はなく、みんな好きだから参加した。そう、今では知らない者はいないであろうWikipediaである。結果は誰もが知るところである。

重要なことは、20世紀的な報酬、ビジネスで当然のものだと誰もが思っている動機付けは、機能はするが驚くほど狭い範囲の状況にしか合わないという事実である。加えて、アメとムチ式(If Then式)の評価報酬システム(成果主義)は、時に創造性や生産性を損なってしまう。さらに、高いパフォーマンスの秘訣は報酬と罰ではなく、見えない内的な意欲にある。

今後のビジネスで必要とされる新しい運営システム、自主性、成長、目的という3つの要素を軸にして回ることになる。自主性は、自分の人生の方向は自分で決めたいという欲求。成長は、何か大切なことについて上達したいという願い。目的は、私たち自身よりも大きな何かのためにやりたいという希望。これらが今後のビジネスの全く新しい運営システムの要素なるのである。如何にしてこれらの要素を満足させていくか、そして、それによって如何にして個々のモチベーションを向上させていくかということがキーとなる。

   
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