分析会社・分析外注活用のために −分析会社の規模と適正−
現在、分析を受託する、いわゆる分析会社は大小含めて数多くの企業が存在します。その中から、自分の欲する情報を得ることができる最適な依頼先を見つけることは容易なことではありません。あなたは、なんとなく大手であれば、名前に馴染みがあれば安心だろうという安易な理由で選んでいないでしょうか。
確かに、一つの傾向として、分析会社の場合、小規模な所よりも大手の方が有利であると言えることが多いのは事実です。その理由はいくつかがありますが、受託分析を成立させる必須条件である分析装置がその代表的なものとしてあげられます。すなわち、どんなに優れた人材がいたとしても、必要な設備、分析装置が無ければ何もできません。そして、ほとんどの場合、分析装置を導入するためには相応の資金が必要となります。例えば、今や普通になったSEMなどは以前に比べて非常に安価になりましたが、導入にはやはり1000万円近い投資が必要であり、汎用のFTIRなどでも数百万円は必要になります。ましてや、XPSやAESなどの高額なものになると1億円を超えることも珍しくありません。
また、分析装置も日々進歩していますから、仮に故障などしていなくても、一定期間ごとに更新していくことが必要となります。ユーザーとなる企業であれば、10年、15年と経過した装置を現役で使用していることも珍しくありませんが、分析会社がその状況ではクライアントの納得は得られません。したがって、資金面という理由から大手に有利に働く傾向は否定できません。
また、装置さえあれば良いというわけではありません。当然ながら、その装置、手法を使いこなすことができる人材が必要なことは言うまでもありません。もちろん、近年の装置の進歩で普通に測定するだけならそれほどのスキルは不要になってきていますが、だからこそ、より高度な経験とスキルが必要な試料前処理や、解析での差別化、すなわち、それができる人材が重要となってきています。人材については、魅力ある経営者など規模に左右されない部分で補うことは不可能ではありません。しかし、世の常として、多くの人材は設備が整って自分のスキルを活かせる所、処遇の良い所、安定したところを選ぶ傾向は否定されません。そのような意味で、ここでもある程度大手に有利に働く傾向は見られます。
しかし、必ずしも大手、または、有名な企業名を冠していれば良いというわけではありません。例えば、大手を標榜するためには会社規模やネームバリューもさることながら、分析メニューの充実も必要不可欠です。装置は資金さえあればそろえることはできますが、それを使いこなすことができる前述のような人材を全て揃えることは容易ではありません。また、豊富な分析メニューが連携できているとも限りません。
これに対して、小規模な所は確かに分析メニューという意味では大手には敵いません。しかし、保有技術に特化した領域においては、決して大手に負けないレベルを持っていることも少なくありません。それは、大手であればメニューのために保有するということも規模の力で可能ですが、小規模であれば補完してくれるメニューがありませんからそれは許されません。もちろん、全ての小規模な所がそのように特定分野でハイレベルであるという保障はありませんが、少なくともその分野においては大手に勝てるレベルを持っていなければ存続できないでしょう。
では、自分の希望するメニュー(分析手法)を持っているところが見つかれば小規模なところの方がレベルが高いと言えるでしょうか。残念ながらそうとも言えないところが分析業界の難しい所です。それは、分析会社は、材料であれば有機から無機まで、分野で言えば工業材料から医療材料、製薬まであらゆるものが対象になります。
例えば、FTIRを例に考えて見ましょう。FTIRは分析装置の中でも比較的導入しやすい装置です。しかし、FTIRを持っているからと言って、これらに全て対応できるわけではありません。有機物と半導体、どちらもFTIRで分析して非常に有益な情報を得ることができますが、FTIRの世界でもこれらは全く異質なものであり、これらを同等に扱える技術者は極めて稀です。また、製薬、医療分野などは工業材料と同列に議論できないことは容易に想像できます。
したがって、大手も含めてですが、特に小規模なところの場合、分析手法だけでなく、得意分野にも注意を払う必要があるということです。残念ながら、得意分野ではないにもかかわらず受注を取るために無理に受託するというケースは少なくありません。ただし、上手く自分の希望とマッチする所を見つける事ができれば、非常に良い結果を得る事を期待できます。
したがって、大手という看板に安易に寄りかかるのではなく、規模に関わらず、広く自分の希望とマッチする所を探し出すことが非常に重要なこととなります。しかし、現実には口で言うほど簡単なことではありません。通常考えれば、問い合わせがあり、そのメニューを持っていれば、「実はそれはあまり得意ではありません」、とは誰も言いたくありません。しかし、貴重な予算と時間、サンプルを使って行う依頼分析なのですから、最適なところを選択することが必要不可欠です。
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