分析会社・分析外注を真に活用するために −分析担当者の力量−
さて、あなたは受託分析会社・分析センターの人間が全て分析のプロばかりだと思っていませんか?そんなことはありえるはずもなく、入社すぐの新人から、その分析手法をやって何十年というベテランまで様々なレベルの人間で構成されています。これ自体は、企業の人員構成としては特別なものではありません。しかし、分析相談や分析依頼をする立場からすると大きな不安を感じるところです。すなわち、自分の分析担当者はどういうレベルの人間なのか。
もちろん、同様のことは営業担当者でも言えます。営業担当者の中には、分析担当者から転属した者もいますが、営業担当者として採用された者ももちろんいます。前者の場合は、ある程度分析の現場を知っているのですが、後者の場合には新人研修でチラッと見た程度というのが現実です。しかし、そんな担当者でも営業の現場では同様に分析相談や分析依頼に対して対応していくのです。
実際、受託分析会社・分析センターの中ではどのように教育を行っているのかというと、一般的な企業と同様に基本的にはOJTということになります。およそ、数ヶ月から半年、1年ぐらいは教育係の人間に付いて分析装置のオペレーションや分析データの解析などについて教育を受けることが多いと思います。ただし、この教育もその時の教育係の忙しさによって、ただのお手伝い期間となることも珍しくないのが実情です。そして、その期間の中で少しずつ教育係から離れていき、ほとんどの場合入社2年目になると、基本的に一人立ちということになり、分析依頼の受注から報告までの全てを一人で実施することになります。そう、2年目からは、誰でも受託分析会社・分析センターに在籍する限り実力とは関係なく表向きは分析のプロフェッショナルに「名目上」はなれてしまうのです。
実際には、他の業界でも同じような流れであることは珍しくありませんので、分析業界だけが特異な人材育成を行っているわけではありません。また、一人立ちといっても全てを一人で閉じるわけではなく、当然ながら報告書を出す時には、先輩や上司のチェックを受けることになります。ただし、直接のやり取りや日々の判断、分析作業、解釈などは自分で行うことになりますから、結果に重大な影響を与える細部は自分で判断することになります。さて、あなたの会社で入社2年目の人間に研究テーマを任せるでしょうか。
あなたは分析依頼をするときに、新人とベテランとどちらを選びたいですか?もちろん、新人割引などありませんから、依頼コストはベテランも新人も同じです。答えは聞くまでもないでしょう。しかし、あなたはそれを選択する権利は持っていないのです。分析依頼をする側でありながら、希望を言うことはできないのです。ほとんどその時の運だけで分析担当者が決まると言ってもよいでしょう。
もちろん、ベテランと呼ばれる人たちの方が優れている、望ましいとも限りません。長年その分析手法に携わっているからこそ、分析依頼への対応というものにも一つのパターン、もっと言うなら、ポリシーのようなものを持ってしまうことがあります。依頼者の意向など関係なく、自分の考えだけで進めていってしまうベテラン分析担当者も少なくありません。そんなとき、上手く目的とマッチングすれば良いですが、もしもずれていた場合に本当に望んでいる結果が得られるでしょうか。
また、分析担当者の経験年数だけでなく、受託分析会社・分析センターのシステムにも問題が存在することがあります。分析業界においても分業化の流れは生まれています。一つの例では、分析前処理専門の担当者、分析担当者、分析報告書作成担当者という流れ作業になっている場合もあります。会社によっては報告担当者以外は全てが派遣ということも珍しくなくなっています。もちろん、派遣社員のレベルが必ずしも低いというわけではありませんが、ほとんどの分析会社での派遣社員に対する考え方は補助要因であることから彼らには十分な情報は与えられないのです。
特に、このようなケースの場合、前処理担当者は詳細な分析依頼の内容を理解しないまま機械的に作業を行っていくという場合もあります。分析担当者も指示された内容の結果だけを報告書担当者に提出し、分析依頼の全容を把握しているのは分析報告書作成担当者だけということもあります。前述のように、最近になって分析業界でも派遣社員が増えてきており、残念ながら彼らは作業者という位置づけなので、今後もこのような仕事内容の縦割化が進んでいくものと考えられます。
このような分業体制は、複雑な分析の工程を細分化して担当者を育てることで、個々の作業レベルを上げることができるという考え方で進められています。また、分析装置や分析担当者の稼働時間の効率化にも有効であると考えられてます。しかし、分析依頼に対する出来栄え、報告書のレベルという観点では、必ずしも歓迎されるものではありません。
分析報告書担当者は分析依頼の全容を一応把握しているものの、分析前処理の状態、分析実施時の状況の詳細は実際に自分で作業するほどには把握することができません。しかし、そういった実作業の現場で思わぬヒントに出会うことが少なからずあります。また、実際に作業を行いながら分析依頼の目的に沿った実施内容を検討していくことでより良い結果が得られることが多々あります。そのようなことも、分析依頼と実作業などの本当の意味での全体像を把握しているからこそ可能なことです。
そして、報告内容のレベルというのは、定量的に評価することは難しく、結果に不満があったとしても分析自体やデータ解析が間違いでなければ基本的に同意することになります。彼ら受託分析会社は原則としてあなた方が求めている原因究明を行うことが業務ではなく、分析を行いその結果を報告することが業務なのです。正しいスペクトルを取得して、それに正しい帰属を付けて、違いがあればその違いに言及するまでをレポートにすることが基本業務なのです。したがって、トラブルの原因や研究開発が上手くいかない理由などの本当に知りたいことについては、依頼者が考えなければならないのです。良くある言い訳は、その材料、プロセスのことは良く知りませんから、ここから先はそのことを良く知っているそちらで考えて見てください、と言われます。だからこそ、分析を依頼するプロセスが重要になるのです。
これらは、原則論であってどこまでレポートの中で言及するか、どこまで突っ込んだ解析を行うかは担当者の判断一つで変わります。中には、その材料の事を勉強したり、論文を取り寄せたりする担当者もいるかもしれません。しかし、少なくとも新人には難しい注文であり、中堅以上で向上心の高い担当者に巡り合える事を願うだけです。ですから、別の分析担当者であれば異なる解釈の仕方、新たな情報を引き出せたかもしれないのにそれは闇の中に消えていってしまうのです。
そういったことが起きないためにも、分析に精通した人間が分析依頼の場に立ち会うことが大きな意味を持つのです。また、分析担当者として育成されればされるほど、本来分析スキルと同時に必要となる材料やプロセスといった研究開発やものづくりとは離れていきます。あなたも一度は聞いたことがあるです、「材料やプロセスのことはよくわかりません」というフレーズを。だからこそ、分析と、材料やプロセス、研究開発、ものづくりの両方に精通した人間が必要になるのです。

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